溶かさない退職金運用について重要なポイントを解説【参考付き】

2021.08.02

「老後の資金形成のために、退職金運用を考えている」

「退職金を溶かさないためのポイントが知りたい!」

リタイアが視野に入るとき、退職金運用を考えることがあるかと思います。退職金は、一般的に数千万円のお金が入るので、しっかりとした資産運用が必要です。

そこで、大切なお金を溶かさないために、今のうちに「退職金運用」を少額からイメージしておきたいところでしょう。

「まだ若いから関係ない」ということはありません。当記事では、退職金の運用方法をポートフォリオ例付きで解説します。若い人にも知識として大切な内容ですので、ぜひ参考にしてみてください。

退職金運用でおすすめなのはETF

退職金運用をするなら、投資信託よりもETFがおすすめです。ETFは、簡単に言うと「上場投資信託」を指します。

ETFは株式に上場しているため、リアルタイムでの売買が可能。時価総額が高く、償還のリスクを抑えられるというメリットがあります。また、時価総額が高いところにはお金が集まるので、1人1人にかかるコストが安くなるのも魅力です。

さらに、投資信託では自動再投資になる銘柄が多いですが、ETFにはこのシステムがありません。

例えば、投資信託で人気の銘柄「eMAXIS slim米国株式(S&P500)」の属性区分内「対象インデックス」欄には、次のような記載があります。

「その他(S&P500指数、配当込み、円換算ベース)」

つまり、この投資信託は配当金を出さずに、自動再投資されますという意味なのです。

自動再投資は、長期で見ると複利で資産を増やせるのでメリットになります。しかし、退職金運用の場合には、都度しっかりと配当金を受け取りたいと思うことが自然です。

米国株ETFは高いリターンを期待できるだけでなく、年4回の配当も受け取れます。退職金運用にETFがおすすめなのは、これらの理由があるからなのです。

退職金運用のおすすめポートフォリオ

退職金運用のポートフォリオを組む際には、まず自身が何を重視するのか?を考えましょう。

  • 保有資産を売却することで、生じた差額で利益を獲得する「キャピタルゲイン」
  • 資産を保有したまま、配当金や利子などで利益を獲得する「インカムゲイン」
  • リスクを取って運用した結果、「リスクがゼロと仮定した安全資産から得られる利益をどの位上回ったのか」を比較できるようにした指標、「シャープレシオ」

あなたがどれを重視し運用したいかで、ポートフォリオが変わります。今回は、退職金運用のポートフォリオ例をご紹介しますので、参考にしてみてください(表記載の利回りは、2021年7月10現在の数字です)。

ポートフォリオ1

こちらは、最もシンプルな構成のポートフォリオです。S&P500に連動したETF「VOO」を軸として組み込みました。そして、高配当ETFである「VYM」「HDV」を合わせています。

銘柄 割合 利回り
VOO50%0.69%
VYM25%0.7025%
HDV25%0.8885%

トータルリターンを算出すると、配当利回りは2.2775%です。高配当ではないですが、安定した利回りを目指せます。また、利回りを高くしようとすると、どうしてもリスクが高くなります。

退職金を溶かさず、適度なバランスを取ることが大切です。今ポートフォリオは、キャピタルゲインを狙いつつ、含み損になりにくい例となっています。

ポートフォリオ2

こちらのポートフォリオは、①に債権ETFであるBNDを加えた例です。債権ETFは満期がなく、定期的に利子を受け取れます。そのため、BNDの組入れはリスクを下げる効果があるのです。

銘柄 割合 利回り
VOO40%0.552%
VYM20%0.562%
HDV20%0.708%
BND20%0.406%

トータルリターンを算出すると、配当利回りは2.2280%です。限りなくリスクを抑えたポートフォリオと言えます。後述しますが、シャープレシオ重視の人におすすめです。

ポートフォリオ3

こちらのポートフォリオは、②の高配当ETFであるVYMを、SPYDに変換したパターンです。米国S&P500高配当ETFであるSPYDを組み入れることで、高い配当利回りを目指せます。

銘柄 割合 利回り
VOO40%0.552%
SPYD20%0.888%
HDV20%0.708%
BND20%0.406%

算出された配当利回りは、2.5540%と最も高い結果となりました。優秀なポートフォリオと言えるでしょう。

過去30年のバックテスト結果

今回は、投資期間30年でバックテスト(ポートフォリオビジュアライザー使用)を実施しました。投資期間は1991年〜2021年、初期投資1,000万円の場合です。さらに、リバランスは四半期に1回としています(SPYDは2015年10月に上場したので、2016年からの算出)。

バックテストは、ポートフォリオ①が最もパフォーマンスがよいという結果になりました。安定した配当利回りが目指せると言えます。

また、②と③の結果は、チャート上ではほぼ同じ形を維持。②は下落幅が最も少なく、債権を組み込んだ効果が出ています。

最も配当利回りがよかったのは、SPYDを組み込んだ③。シャープレシオで見た場合には、②が効果的という結果でした。②が最も堅実なポートフォリオと言え、下落時にも強いです。

また、①と②を比較すると、配当利回りは①の方が高いという興味深い結果にもなっています。

退職金をうまく運用し、豊かな老後を目指そう

当記事でご紹介したポートフォリオは、あくまでも一例です。考え方やポートフォリオの組み方を知り、退職金運用の参考にしてみてください。

前述した通り、退職金の運用はETFがおすすめです。そして、ポートフォリオを組む際には「自分が何を重視するのか?」を一度しっかり考えましょう。

大切な退職金を溶かさないよう、堅実な運用を心がけてくださいね。

今回の記事をわかりやすく動画でご紹介します。